【産経新聞】パンダ様がやってこなくても何も困らない、黙っていてもそのうち向こうから勝手に送り付けてくるはず

近ごろは「人は見た目がすべて」なんてうっかり口走ろうものなら、「ルッキズムだ」と謗（そし）られ、たちまち差別主義者に認定されてしまう。

でも動物（人間も動物だが）は、ルッキズムが許されるらしい。

ふわふわの白毛に映える黒い垂れ目のパンダは、昭和47年の初来日以来、半世紀以上にわたって日本の婦女子の心をわしづかみにして放さない。男子だって黙っているだけで、隠れパンダファンはかなりいる。

もし、パンダが真っ黒か、真っ白かだったならここまでの人気と、手厚い医療を施され、立派なパンダ舎に住める特別待遇を獲得できなかったろう。パンダは、世界で最も影響力を持つ「政治的動物」だ。

日中国交正常化直後の昭和47年10月、中国は間髪を入れず上野動物園にパンダを贈った。たちまち日中友好ブームが起こり、「台湾同情論」はあっという間に消えてしまった。

同じクマ科のヒグマは、ちょっと人里に降りてきただけで疎んじられ、下手をすると駆除されてしまう。動物は平等でないのである。

■白浜の4頭がいなくなる

筆者だってパンダを憎んでいるわけではない。わざわざ和歌山・白浜のアドベンチャーワールドまでパンダ見物に出かけたこともある。

なにしろ白浜のパンダたちは上野動物園と違ってガラス越しでなく、間近に見ることができる。広い敷地にのんびりと過ごす姿は、中年男でさえ癒やされる。そんな白浜のパンダたち4頭すべてが6月末で一斉に中国へ返還されることになった。

運営会社は、「ジャイアントパンダ保護共同プロジェクト」の契約期間が満了になったため、と説明しているが、大手町の片隅から眺めると、別の光景が見えてくる。

本格的な「繁殖貸与」の形で白浜へパンダがやってきたのは、平成6年。当時、パンダは東京・上野動物園でしか飼われておらず、「なぜ白浜へ？」と大いに話題となった。

誘致の立役者は、白浜を選挙区に持つ政界きっての親中派である自民党元幹事長、二階俊博だ。当時の二階は小沢一郎と共に自民党を飛び出して、非自民の細川護熙政権で汗を流し、実力者への階段をのぼり始めたころ。中国側のみならず、日本側窓口だった通商産業省（現経済産業省）に猛烈にプッシュしたという。

そんな二階が昨年秋に引退した直後に、パンダ返還が決まったのは、偶然とは言えまい。長年にわたって中国と誼（よしみ）を通じてきた二階翁の無念さはいかばかりか。

■実力政治家の引退と関連？

まあ、用済みとなれば粗略に扱うのは、中国共産党のお家芸だ。かつては公明党のトップが訪中すれば、国家主席か首相が面会していたのが、今では党序列4番手が出てきて握手するのが関の山。情けないのは、自民党幹事長・森山裕が会長を務める日中友好議員連盟が、揉（も）み手せんばかりに新たなパンダの貸与を要請したことだ。世界情勢が緊迫しているときにパンダを「下賜」されれば、もっと大事な案件で譲歩を迫られるのが、わからないらしい。

「パンダ様」がやってこなくても何も困らない。黙っていてもそのうち向こうから勝手に送り付けてくるはずだ。彼の国には、他にスターがいないのだから。＝敬称略（コラムニスト）

産経新聞　2025/5/9 11:00
https://www.sankei.com/article/20250509-HTOO3YLHTRNZPBUS7LMOTKABTI/

※関連スレ
【共同通信】 日中議連、中共側にパンダ貸与を要請 ［4/29］ [仮面ウニダー★]
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1745878502/